初級からスタートし、約2か月の学習期間を経た、あるクラスのこと。
習った文法を使い、「大切な人」についてクラスで話す、という授業。
まずは話す前に書いてみよう‥と見本と共に学生へ。
母、父、友人、夫‥
それぞれに宛て、書き始めるや、筆が止まりませんでした。
母が市場で働いていたので、学校の帰り、毎日会いに行きました。
父が毎日、私を学校へ迎えに来てくれました。
祖母は料理がとても上手です。お菓子やお金などをくれました。
兄は家族にとっても大切な人です。
授業の目的は習ったことを使っての練習。
「やさしくて~」や「医者で~」のような接続表現、そして、
「授受表現」をうまく使うこと。
この授業を通じ、ふ、と思ったのです。
母語話者同士でも大切な人への「感謝」は
なかなか伝えることがありません。
普段、心にありながら、改めて表現することのない気持ちを
この「日本語を学ぶ」という名目で表すことができた、と。
正しい表現かどうか、今日習った表現があるかないか、
そんなことはどうでもよくなりました。
ある学生のご家族へ書かれた内容を伝えたところ、
「私の人生で初めてそんなことを言われました。」と。
思う側も思われている側もこんな温かな気持ちになれるなんて…。
また一つ、学生から、そして、日本語を教える現場から、
得るものがありました。